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今月のエッセイ

2012.2.6 『友人にそっぽを向かれた「アオゲラ」』松原巌樹


アオゲラ   

                       

 11月の寒い朝、釜めしで有名な信越本線の横川駅に降り立った四匹の虫たちは、
探鳥を楽しみながら、のんびりと国民宿舎裏妙義を目指して歩き出しました。
宿の手前には妙義湖があり、ここには沢山のオシドリが渡来することで有名です。
宿の裏山には、これまたイヌワシが生息しており、かなりの確率でその雄姿を
見られることも魅力で、それ目当てのバードウオッチャーがやって来ます。

 四匹の虫の顔ぶれはといえば、商事会社の重役、定年後に植木屋に転身をした
レストランの支配人、そしてもう一人と僕が絵描きで、中学生時代の昆虫少年が
「卒業後も昆虫採集や昆虫談義を交わし続けていこうよ」と結成した四匹の虫の会
と言うじつに子供じみた会の仲間というわけですが、これまで数十年にわたり
昆虫採集だ登山だといって、切れ目無く交流が続いてきました。
昆虫を通じてみな動植物への知識や関心が旺盛ですが、野鳥に関しては一応僕に
主導権が与えられたので、今回はガイド役となりました。

 「あっ、キツツキ!」植木屋がアオゲラを見つけました。
 「アオゲラは日本では大変尊い鳥なんだ」僕の説明に「ふーん」と三匹が真顔で
その訳を聞きたがります。そこで僕は歌いました。「あおーげら尊しわが師の恩・・」
結果、三匹は僕を見捨てて宿へ向かいました。