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今月のエッセイ

2009.4.7 「アナグマ」松本晶


作品のタイトル


画像左は日本産アナグマ、右は大陸産アナグマ。
両方を比較してその違いを挙げてみると・・・

①日本産は吻が太く短く大きな臼歯が隙間なく生えているが、大陸産は吻が細長く臼歯が多少隙間を持って生えている。
②日本産の鼻腔は大きくその内部組織も複雑だが、大陸産は小さく内部組織も単純。
③切歯孔(上顎骨裏の切歯後方の孔)が日本産は2つ、大陸産は3つ。
④翼状骨(上顎口蓋骨の両端にある細い骨)が日本産は細長く口蓋骨両端に付いているが、大陸産は口蓋骨全縁に大きく広く真ん中に切れ込みのある魚尾状に付いている。
⑤大陸産の下顎骨は間接付近から下部が日本産より厚く、全体的に大きく丈夫なつくりになっている。

・・・と、キリが無いくらいだ。

日本産アナグマ(ニホンアナグマ)は太く大きな鼻先でほとんどミミズばかりをあさると聞く。 そんな彼らにはより敏感な嗅覚が備わり、隙間の無い丈夫な歯でしっかりミミズを捕らえることが重要なのかもしれない。

大陸産アナグマは細長い鼻先でミミズだけでなく堅い木の実や果実、昆虫や小動物なども積極的に食べるらしい。
より強力になった顎筋(大きな翼状骨から下顎内側に付く筋肉)類を使って幅広い食性を維持しているのかもしれない。

最近、アナグマ属は3亜種から3種(ヨーロッパアナグマ・アジアアナグマ・ニホンアナグマ)になる傾向があると聞いた。
確かに形態の違いを見てもその差は大きいし、食性や生態を比べてもまったく同じ種類とは思えない。

外国の絵本にたびたび登場するアナグマは、細長い白い顔にくっきり黒い縞の入ったヨーロッパアナグマだ。
ニホンアナグマはだんごっぱなで、個体差はあるが、体全体が褐色で顔の縞もそれほどハッキリしない。
昔からタヌキと混同されてきて、未だ日本人に認知されていないかわいそうな野生動物なのだ。

イタチの仲間でありながらずんぐりむっくり。
きれい好きで恥ずかしがりやだが、結構気が強くて暴れだしたら手がつけられない。
寒がりやで冬の間は穴にこもっているから、そろそろ活動しだす時期だ。

そんなかわいい生き物が日本にはまだまだたくさんいるんだなと実感できる日が、ずっと続くといい。