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今月のエッセイ

2010.1.16 「とある公園にて」佐藤忠雄


『秋光』個人蔵(464×913)




都心で生活する私にとって、日常的に自然と接する事のできる場所となると、
残念ながらこぎれいに整理された僅かなスペースの都市公園という事になってしまう。
しかし、もう14才になる柴犬のクロを連れ毎日散歩するとある小さな公園あたり でも、
さまざまな生き物の姿を見る事ができ飽きる事は無い。
その小さな公園には コンクリートと石で仕切られたこれまた小さな池があり、年中水抜きをしてきれいに
清掃され、水を張らない期間も長い、冬の間はほとんど干上がっている状態である。
しかし、春になって20センチ程の深さではあるが水が張られ、 暫くするとどこからともなく
生き物達の気配がしてくる。シオカラトンボをはじめ5種類程のトンボに
アメンボ、ミズスマシ、干上がっている間どこにいたのかたくさんのドジョウも現れ る。
ときには、それをめあてにゴイサギまでやってくる。
忙しく働くサラリーマン がそんな情景に気付く事も無く通り過ぎて行くなか、精悍な顔をしたゴイサギが
ドジョウを捕食する所を、私は犬と共に僅か2メートル程しか 離れていないベンチに座り、息をひそめて
ずっと眺めてしまいました。 きっと暇なおやじだと思われた事でしょう。
そんな状況に違和感を感じない訳ではありませんが、 とにかくこんな環境の所でも毎年決まって現れ
子孫を残して行く、 その生き物達のたくましさに驚かされるとともに、 なぜか嬉しくなり頑張れと言いたくなります。
おまえも頑張れと言われそうですが。
カワセミも近年都市公園でよく見かけます、保護とは関係なく生息させるための
環境を整備した公園もあります。そんな状況はともかく、しぶとく適応して行く
たくましさとその美しさにひかれます。