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今月のエッセイ

『愛犬「さよ」のこと』松本晶



2020年12月21日で満2歳になった愛犬「さよ」は、中型雑種のメスです。
父犬が甲斐犬、母犬が柴犬とビーグルの雑種、4姉妹で生まれたうちの一匹でした。
非常に警戒心が強く、子犬らしからぬ人見知りのため最後までもらい手がみつからなかった彼女が、縁あって私のもとにやってきたのは生後2ヶ月半の頃でした。
私に慣れるまで一週間ほどを要し、最初は水も餌も私が見ているとなかなか口にしませんでした。

そんな「さよ」も、今ではすっかり主人一途で聞き分けも良く、留守番中もいたずらなど一切せずに私の帰りを毎日熱烈に歓迎してくれます。
ただ、人に対して臆病な性格は緩和されてきてはいるものの、なおりはしないのでしょう。
知らない人(特に成人男性)がそばに来ると身を低くして避け、時折ひくくうなることもあります。

住宅街の散歩はびくびくしっぱなしの「さよ」ですが、山野に行くと本領を発揮します。
甲斐犬特有の運動能力と持久力は目を見張るものがあります。そのため、昨年冬から主にヤマドリ・キジ猟犬として活用してみることにしました。 (*猟期は毎年11/15~2/15) 初年は、動きはまずまずでしたが、銃声にまだ恐怖心を持っているようで、私の挙銃動作を見るや、ぱっと遠のくクセが抜けきれませんでした。
今年は銃声に慣れさせるため、最初の数回は比較的獲物が多い(=撃つ機会が多い)河川敷の猟場で慣らし、そのかいあって銃声を気にしなくなってき た感じが見て取れました。

さぁ、いよいよ「さよ」と一緒に本命のヤマドリ狙いです。
というより、河川敷でのキジ猟は他のハンターもよく居合わせるので、人見知りの「さよ」が吠えかかってしまうおじさんハンター達に申し訳ない、 というのが実情・・・なるべく人のいない山間部の方が、落ち着いて猟ができると思ったからです。
ヤマドリはその名の通り、山の沢沿いに生息している、キジと同大の美しい鳥です。
捕獲してよいのはオスだけで、犬が追い出して飛び立った瞬間に雌雄を判別して引き金を引かねばなりません。木立の合間を素早く飛んでいくので、 じっくり狙いを定めていたらとても撃ち取れるものではないのです。
ようやくヤマドリがいそうな猟場を絞り、12月30日現時点で3回出猟していますが、せっかく「さよ」がヤマドリを出してくれても、メスだったり、 オスだとしても奥にとばれたり、木や枝が邪魔だったり、足場が不安定だったりで、撃てないことが多いです。
私は半日山歩き(沢沿いのけもの道やガレ場、山腹の急斜面など、時には四つん這いになりながら進む、道なき山中を歩くこと)してもそんなに苦 ではありませんが、重い銃を持って気を張り詰めながら進むとなると話は別です。2~3時間で腕と肩のこわばりが徐々にやってきて、あまり無理をすると、 ひどい肩こりで翌朝目が覚めることになってしまいます。 なので、猟は午前中だけと決めてルートをとります。
出会いがあっても、なかなかヤマドリをとるまでには至らない、奥の深いゲームなのです。
(*ヤマドリ猟については、また別の機会にお話出来れば幸いです。)

「さよ」と誰もいない山を歩くのはとても楽しいものです。
銃を手にすることの緊張感と、普段使わない五感を無意識にフル活用している自分に気付き、単なる散歩や登山とは違う空気を感じます。
遠く離れすぎず、違う方向へいっても呼べばすぐにやってきて、私の進みが遅いと(心配してか)そばまで戻ってくる「さよ」が、愛おしくて仕方ありません。
犬の寿命は長くて10~15年ほどと言われています。
あっという間に終わってしまいそうな時間です。
だからこそ、できる限り色々なことを「さよ」と楽しみたいと思っています。

あと・・・そうですね・・・はい、もっと射撃練習したいと思います。


愛犬「さよ」



キジの猟場にて



ヤマドリの猟場にて



網で捕ったヒドリガモに興奮する「さよ」