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今月のエッセイ

2008.9.28 「変な虹」 四本彬


作品のタイトル


虹が見える、という声につられて外に出てみると、たしかに、頭のてっぺんに近い方向に虹のかけらのような、小さい、しかしふつうの虹よりはるかに色鮮やかな、濃い虹が見えていた。
それは長さも幅も非常に小さくて、いわばスポット虹とでもいうようなものだった。
円弧の向きは太陽を中心にして外向きであることがかろうじて確認できたので、その点ではふつうの虹と同じ向きなのである。
こんな虹を見たのは、もちろん初めてだったので、その正体を知りたいと、その後いろいろ本などで調べたが分からずじまいのままであった。

またあるとき、NHKラジオのお便り番組で、逆さの虹を見たという人の目撃情報が放送された。
まさか、逆さの虹などというものがあろうとは・・・。早速NHKに問い合わせると、目撃者への直接の連絡を勧めるアナウンサーじきじきのおはがきを頂戴した。
その方から送っていただいたスケッチを見ると、ふつうの虹に比べると小さいながら、まさにさかさまにかかった虹であることがはっきりとしていた。
しかし、この虹はふつうの虹のように太陽と反対の方向に見えたのではなく、太陽と同じ方向に出ていたことがわかった。
つまり、日の出直後の、東の空に現れていたのであった。
したがって、この虹は、いわゆる虹ではなく、太陽のまわりに出来る暈(かさ)とか幻日という現象の仲間であると思われた。
またまた正体を暴かなければならない不思議ななぞが増えたのであった。

私は日頃から天空の珍しい現象に興味をもっていたので、ひまさえあれば意識的に空を眺める習慣があり、これまで、幻日や暈や彩雲などを目撃し写真もずいぶん、たくさん撮ってきた。
これらの現象の総合的な研究書、R.グリーンラー著「虹、暈、光芒」という本によると、幻日や暈のような太陽を中心に現れる現象は主として氷晶によって作られていることがわかる。
氷晶というのは六角形の板あるいは柱の形をした氷の結晶で、いわゆる雪の結晶の、核の部分である。
つまり、この核の角から枝のように結晶が成長したものが地上に舞い降りてくる雪の結晶なのである。
上空に漂っているこれらの氷晶に太陽の光線が当たると屈折したり反射したりして、いろいろな天空の現象を引き起こすのである。
一方、虹はご存知のように、雨の水滴に当たった光線が屈折して引き起こされる。
したがって、虹は夏によく見られるのに対して、幻日や暈は冬のほうがよく見られることになるが、しかし、上空は夏でも低温であるから、高空に薄雲がかかっていると一年中見られるわけである。
とはいえ、氷晶による現象はやはり北国でよく見られるらしく、この本には過去に記録されたすばらしい天空ショーの図式が載っている。
これらの図式や写真の中に私が見た変な虹や逆さ虹が含まれていないか調べてみたが、図式では色がわからないし、写真の場合でも、色や形はケースバイケースであり完全ではないので、自信をもって、これだといえるものは見つからなかった。

最近は、ちょくちょくインターネット百科事典のウィキペディアを利用して重宝しているので、もしかして天空現象についても何らかの情報が得られるのではないかと思いGoogle の検索サイトに「逆さ虹」と入れてみた。ところが驚いたことに、「環天頂アーク(逆さ虹)」というまさにぴったりの項目がトップに並んでいるではないか。
呼び出して見ると、これまで、きわめて稀な現象と私が勝手に思いこんでいたいろいろな天空現象の写真が、まるで日常茶飯事のごとくにざくざくと並んでいたのである。
そしてそれらの成因についても微に入り細にわたり、説明が尽くされていた。
逆さ虹の写真は、まさに探していた対象にぴったりであり、やっと長年の疑問が解消されたのであった。
一方、私が見た変な虹はどうかというと、これまた逆さ虹の一部が見えていたのだということがこの説明文から説明できることがわかり、こちらの疑問も同時に解消された。

Wikipedia「環天頂アーク」によると、「太陽の上方に離れた空に虹のような光の帯が現れる現象である。
その形が地平線に向かって凸型の虹に見えることから、俗に逆さ虹という。
その現れる高度は、太陽高度22度のとき、太陽の46度上、太陽高度32度のとき、天頂に一致する。」 私が天頂の虹を見たのは、9月24日の午後4時30分前後と記憶しているので、太陽高度は22度から30度あたりであるから、虹は天頂近くに見えていたことになり、まさにこの環天頂アークの一部だったということになる。
「環天頂アーク(逆さ虹)」のホームページからの関連サイト「空の輝き---」によると、「環天頂アークや環水平アークというのは、晴れてさえいれば三日に一回(もしかしたらもっと高頻度)は起こるありふれた現象です。
ただ時間的に短かったり、低層の雲に隠れていたり、霞んでいたり、角度が高かったりで気が付かないだけです(きれいなのは非常に稀です)。」ということなので、みなさんもたまには首の運動をかねて天頂観察をされてはいかがであろうか。
ちなみに9月の観察に適当な時間帯は、午前6時から8時半までと、午後3時半から6時までだそうである。