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2008.6.10 「田んぼの中の古生代」 秋山昌範

2008.6.10 「田んぼの中の古生代」 秋山昌範


作品のタイトル


 梅雨を迎え、日本列島が水で満たされるこの時期、水田の中にはミクロの生態系が出来上がっています。
うっかりすると見過ごしてしまうような水深10センチメートルにも満たない水域が、多彩な生物たちでひしめきあっているのです。
藍藻類、珪藻類、緑藻類、鞭毛藻類などの植物プランクトンやそれらをエサとするワムシ、ゾウリムシ、ミジンコ、ケンミジンコ、カイエビやカブトエビなどの動物プランクトンと小型甲殻類。
これらの生き物たちは、田んぼに水が張られてから中干し(なかぼし:稲の根張りをよくするため、一時的に田んぼの水を切って底泥を干し上げること)までの3ヶ月ほどの間に子孫を残し、その一生を終えます。

 生育のための時間が限られているこれらの小さな命は、短いライフサイクルに適応するため、生活や体の構造がシンプルでなくてはなりません。
そのことは結果的に複雑な体構造への進化を進めることなく、太古の生物の姿をよく留めていると言われています。
また、有機質が分解されて栄養分が蓄積された田んぼの泥は、古代の海に命を誕生させた栄養スープの役割をしていて、乾燥に耐えた後水張りとともに誕生したプランクトンたちに、素早く必要な栄養やミネラルを供給します。
つまり、田んぼの浅い水中は、毎年にわかに誕生する小さな古代水域なのです。

 こうした命の多くは1ミリにも満たない微細なものですから、私たちが肉眼でその姿を確認することは難しいですが、博物館や水族館、自然観察施設などに出掛けると顕微鏡を使って観察できような展示コーナーがありますし、中にはカブトエビやホウネンエビのように3~5センチ以上にな る種類もいます。

 案外私たちの身近なところにもある「ミニ古生代」、ちょっと覗いてみると水田風景もひと味違ったモノに見えてくるかも知れません。


左画像:霞ヶ浦のプランクトン(フォト+イラストレタッチコラージ ュ)
右上画像:ゾウミジンコ(実態顕微鏡スケッチ)
右下画像:全長が5センチを超 えるアメリカカブトエビ(飼育個体)